「法定の遺言事項以外の遺言の法的効力」
質問内容
祖父の遺言書には、付言事項として、長男に「遺留分減殺請求をしないことを望む」「兄弟仲良くするように」との記載がありました。これらの付言事項には、どのような法的効果があるのでしょうか。
父が、長男に対し、遺留分減殺請求訴訟を提起できますか。また,兄弟仲良くするようにという祖父の遺言に反するものとして、何らかの法的な不利益を被ることはあるでしょうか。
回答
遺言に記載することで法的効力が与えられる事項(「遺言事項」)は、法律で定められた事項に限られており、それ以外の記載事項は、法的な効力は与えられません。平成25年8月末現在において、遺言事項として法定されている事項は、以下の①~⑮です。①認知
②遺贈と寄附行為
③未成年後見人の指定、未成年監督人の指定
④相続人の排除および排除の取消
⑤相続分の指定または指定の委託
⑥遺産分割方法の指定または指定の委託
⑦遺産分割の禁止
⑧相続人相互の担保責任の指定
⑨遺言執行者の指定または指定の委託
⑩遺贈減殺方法の指定
⑪遺言の撤回
⑫特別受益の持ち戻しの免除
⑬祭祀承継者の指定
⑭信託の指定
⑮生命保険金受取人の指定・変更
したがって、お父様が、遺留分減殺請求を行ったり,兄弟仲良くするようにという付言事項に反したとしても、法的な不利益を被ることはありません。
ただ、法的な効力が与えられなくとも、故人が、遺言書に、家族への感謝や想い、相続の割合等を決めた理由、今後への期待、等を記載されますと、残された家族にとって、大きな慰めや今後の指針となることも少なくありません。
ご質問のように、長男にすべての財産を相続させる理由を、遺言者本人が付言事項として、説明することで、二男であるお父様も納得され、深刻な対立を回避できる場合もあると思われます。