先行相続、2次相続、3次相続が発生していたため、法定相続人が合計20名以上となった事案で、調停手続を経ることなく、遺産分割協議を成立させ、相続不動産を早期に売却(換価)することができたケース
相談前の状況
相談者(甥)は、1人暮らしをしていた伯父が亡くなったため、亡伯父が居住していた不動産その他の財産の管理・処分を行おうとしたが、相続人を調査したところ、多数の相続人が存在することが判明した。また、亡伯父の居住していた不動産の名義を確認したところ、既に亡くなっていた伯母との共有のままであり、伯母にも多数の相続人が存在することが判明した。
相談者(甥)は、亡伯父が居住していた不動産を管理していたものの、そのままでは売却することはできず、管理費用についても自ら負担せざるを得なかった。
このような状況のもと、相談者は、早期に亡伯父の遺産分割手続を完了すること、亡伯父が居住していた不動産を売却することを希望していた。
相談後の状況
当事務所にて受任後、まずは、亡伯父の相続人全員に手紙を発送して状況を説明したうえで、個別に電話あるいは訪問して相続の意思を確認し、相続人全員との間で亡伯父の遺産分割協議を成立させた。これによって、亡伯父の不動産共有持分について、相談者は単独所有することができた。
その後、亡伯母の相続人全員にも、同様に手紙を発送して状況を説明したうえで、個別に電話あるいは訪問して相続の意思を確認し、亡伯母との関係でも、相続人全員との間で遺産分割協議を成立させた。
本件は、2次相続、3次相続の発生などによって相続人が合計20名以上に及んだうえ、相続人間でも全く面識がないという事案であったため、遺産分割協議が長期化するおそれが懸念されたが、手紙での説明に加え、個別に電話あるいは訪問して相続人の負担を極力軽減するよう努めた結果、感情的な対立は一切なく、円滑に遺産分割協議を成立させ、早期に不動産を売却することができた。
弁護士のコメント
本件のように相続人が多数で、相続人間の関係が希薄な事案では、任意での交渉の労力を嫌がり、直ちに調停申立が選択される場合があります。
しかしながら、遺産分割協議では、相続人の協力は必須であり、感情的な反発はできる限り回避する必要があるところ、調停手続では、相続人(あるいは代理人)全員の出頭が必要となり、相続を希望しない方や遠方に居住する方には無用な労力や負担をかけることになり、却って感情的な反発を招く場合もあります。また、調停手続では、解決までに早くて数か月、場合によっては1年を超えるケースもあります。
本件でも、受任時には遺産分割協議の成否は不透明であったため、直ちに調停申立を行う方法も考えられましたが、まずは相続人に負担の少ない方法を試みるべきとの考えのもと、手紙や電話、訪問等によって丁寧に説明して協力を求めた結果、相続人の協力が得られ、早期かつ円滑に遺産分割協議を成立させることができました。