債務超過が予想されていた亡母の相続について、相続放棄ではなく敢えて限定承認を行ったケース
事案の概要
母が死亡し、その法定相続人は娘である依頼者のみであった。亡母は、生前、複数の消費者金融等から借入を行っており、相続財産はマイナスであることが明らかな事案であった。
通常、このような場合には相続人が相続放棄を行うことになるが、娘である依頼者が相続放棄を行った場合、亡母の兄弟が第2順位の相続人となる。しかし、依頼者は、亡母が借金を残していることを他の親族に知られたくないという気持ちがあり、また、第2順位の相続人に迷惑を掛けたくないという強い意向を有していた。
そのため、敢えて手間と手続費用がかかる限定承認の手続を取ることとした。
手続き
家庭裁判所に限定承認の申立を行った後、依頼者が相続財産管理人に選任され、2か月以上の期間を定めた公告・催告を行い、申出があった債権者に対して相続人の財産(本件では預金があった)を分配して手続が結了した。
弁護士のコメント
限定承認は、申立時に財産目録を作成する必要があること、債権者に対する配当の手続があること等から、相続人が行う手続きは、相続放棄とは異なり若干複雑になりますので、弁護士にご相談することをお勧めします。
また、限定承認は、申立期間が限定されていること、法定相続人全員で申し立てすることが必要であること、手続費用を要すること(裁判所によって異なります)等に留意してください。