「[2]遺産分割に関する改正」
質問内容
Q4:例外的に,遺産の一部分割が認められないのは,どのような場合かを教えてください。
回答
1 制度の概要遺産の一部分割を,家庭裁判所の調停・審判により求める場合(改正民法第907条2項本文),遺産の一部分割が「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」には,例外的に,一部分割が認められません(同項但書)。
2 留意点
(1)遺産の一部分割が「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」とは,その一部を先行して分割した場合に,残りの遺産分割によって,全体として適正な分割を達成できる見通しが立たないような場合をいいます。
(2)例えば,相続人が配偶者と長男,次男の3名で,遺産として自宅不動産(1000万円)と預貯金(200万円)があり,配偶者と長男は,自宅不動産を配偶者が単独で取得することに同意しているが,次男は反対している,という場合を考えてみます。
この場合に,自宅不動産だけを先行して一部分割し,相続人のうち2人が賛成しているとして,配偶者がこれを単独で取得した場合,配偶者は法定相続分(600万円)を超える遺産を取得する一方,残りの遺産(預貯金200万円)の分割だけでは長男と次男の法定相続分(各300万円)を確保できず,配偶者に代償金を支払う資力が無ければ,次男は本来取得できたはずの遺産を取得できなくなるおそれがあります。
このような場合には,自宅不動産だけで独立して判断するのではなく,預貯金や配偶者の代償金の支払可否等も含めて,遺産全体の分割方法を判断する必要があるため,遺産の一部分割が「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」に当たると考えられます。